私は築四十年の実家をリフォームした際に、人生で最大の後悔を経験しました。当時は、両親のためにバリアフリー化してあげたいという一心で、良かれと思って家中を大改造したのです。しかし、実際に工事を終えてみると、そこには想像もしなかった落とし穴が待っていました。結論から申し上げますと、高齢の住人がいる場合、良かれと思った大規模リフォームはしないほうがいいことも多いのです。私の両親は、長年慣れ親しんだ家の段差や扉の重さ、さらには独特の不便さまでもが、実は無意識の身体感覚として定着していました。それが突然、すべてがフラットでオートマチックな空間に変わったことで、父は方向感覚を失い、母は歩行の際にどこに手を置いていいか分からず、かえって家の中での転倒が増えてしまったのです。生活の質を上げるためのリフォームが、住む人の心身の安定を奪ってしまうという皮肉な結果になりました。また、費用の面でも失敗しました。古い建物ゆえに、壁を剥がしてみると想定外のシロアリ被害や土台の腐朽が見つかり、当初の予算の二倍近い金額を支払うことになりました。これなら、思い切って更地にして小さな平屋を建て替えたほうが、よほど合理的で安全だったはずです。こうした経験から私が得た教訓は、リフォームという手段が目的になってはいけないということです。特に、古い家を再生させるという情熱に燃えているときは、冷静な損得勘定が働きにくくなります。もし、あなたが今、莫大な費用をかけて古い家を蘇らせようとしているなら、一度立ち止まって、その家が本当にその投資に耐えうる構造を持っているのか、そして何より、そこに住む人がその変化を心から望んでいるのかを確認してください。無理な改修を強行するよりも、小さな修繕に留めておき、よりシンプルな生活環境を整えるほうが、結果として幸福度が高まることもあります。リフォーム業者の言葉をすべて鵜呑みにせず、第三者の専門家に診断を仰ぐなどして、しないほうがいい工事を切り捨てる判断力を持つことが、住まいを守る上での最善の防御策となります。