家づくりに関わる専門家として、私は相談に来られる方に「今はリフォームを中止したほうがいい」と助言することがあります。その判断を下す最大の基準は、リフォームに対する動機がネガティブな感情に支配されているときです。例えば、今の家に不満があるからという理由だけで、明確な改善のビジョンがないまま工事を始めようとする場合です。不満を解消するためだけの場当たり的なリフォームは、一つを直すと別の箇所の古さが際立ち、結局次から次へと工事を繰り返すリフォーム中毒のような状態に陥りやすいのです。このような精神状態での工事は、結果として莫大な費用を投じても、最終的な満足感が得られないことが多いため、一度冷静になる期間を持つべきです。また、予算設定に余裕がないときも、リフォームはしないほうがいいタイミングです。リフォームに予期せぬトラブルはつきもので、壁を開けてみたら補修が必要だった、材料費が高騰したといった理由で、見積額から一割から二割程度は費用が膨らむことが常識です。この余力がない状態で無理に工事を始めると、最後の仕上げでグレードを下げざるを得なくなったり、必要な補強を断念したりすることになり、中途半端な仕上がりで終わってしまいます。さらに、業者とのコミュニケーションにおいて、少しでも不信感や違和感を抱いているなら、その直感に従って契約を中止すべきです。リフォームは数週間にわたって見知らぬ他人が家に出入りする、非常にプライバシーの負担が大きい作業です。信頼できない相手と過ごす時間は、精神衛生上この上ない苦痛となります。専門家の意見を押し付けてくる業者や、メリットばかりを強調しリスクを説明しない業者は避けるべきです。リフォームは義務ではありません。より良く生きるための選択肢の一つに過ぎません。今、リフォームをしないことで得られる平穏や、手元に残る現金の価値をもう一度考えてみてください。条件が整わないまま強行するリフォームよりも、適切な時が来るまで待つという選択のほうが、結果としてあなたの人生を豊かに彩ることになるのです。
専門家が助言するリフォームを中止したほうがいいケース