多くの住宅アドバイザーが口を揃えて言うのは、高齢者の自宅における過剰なリフォームは慎重になるべきだという点です。これは、単に金銭的な問題だけではありません。高齢期の身体状況は変化が激しく、リフォームした時点での不便さに合わせて完璧に作り込んでしまうと、数年後に症状が進んだときにはその設備がかえって邪魔になるというケースが多発しているからです。例えば、車椅子での生活を想定して廊下を極端に広げたり、専用の昇降機を設置したりしたものの、実際にはベッド上での生活が中心となり、高額な設備が一度も使われないまま埃をかぶってしまうという事例は珍しくありません。このように、将来の不確実なリスクに対して先回りしすぎるリフォームは、しないほうがいいと言わざるをえません。むしろ、その時々の状況に合わせて、手すりの増設や簡易的なスロープの設置といった、原状回復が容易な福祉用具の活用で対応するほうが、はるかに合理的で柔軟性が高いのです。また、認知機能の低下が見られる場合、住環境の劇的な変化はせん妄を誘発したり、不安感を増大させたりする大きなストレス因子となります。見慣れた壁紙の色、長年使い込んだキッチンの配置など、些細な風景が心の安定を支えている場合が多いのです。さらに、高齢者にとってリフォーム工事に伴う長期間の仮住まいや、職人の出入りといった日常の混乱は、心身に大きな負担をかけます。完成した喜びよりも、工事期間中の疲労で体調を崩してしまっては本末転倒です。住まいの安全を確保することは非常に重要ですが、それは必ずしも大規模なリフォームを意味するものではありません。滑り止めマットを敷く、照明を明るくする、不要な家具を処分して動線を整理するといった、工事を伴わない工夫で解決できる問題は数多くあります。高額なリフォーム契約を急ぐ前に、まずは現在の生活の中で本当に困っていることが何なのかを最小限の単位で見つめ直してください。過剰な工事は控え、手元に現金を残しておくことのほうが、医療や介護が必要になった際の変化に柔軟に対応できるという、真の安心感に繋がるはずです。
高齢期の住まいで過剰な工事をしないほうがいい理由