リフォームという一生に数回あるかないかの大きな買い物において、どうしても「少しでも安く済ませたい」という心理が働くのは当然のことです。しかし、リフォームの見積りにおいて「安さ」だけを唯一の決定基準にすることは、極めて大きなリスクを伴います。なぜなら、リフォーム工事の価格を構成する要素のうち、最も削りやすいのが目に見えない部分の品質だからです。例えば、外壁塗装の見積りで極端に安い価格を提示する会社は、下地処理の工程を簡略化したり、塗料をメーカー指定の倍率以上に薄めて使用したりしていることがあります。これによって工事直後の見た目は綺麗に仕上がりますが、数年経たずに塗装が剥がれ、再工事が必要になるという二重の悲劇を招くことになります。同様に、内装工事においても、見えない場所の断熱材をケチったり、安価な接着剤を使用したりすることでコストを下げる手法がありますが、これは住む人の健康や快適性に直接的なダメージを与えます。安価な見積りを出す業者は、往々にしてアフターサービスや保証の体制も整っていないことが多いです。工事が終わればそれっきり、不具合が発生しても連絡がつかないという「売り逃げ」のようなトラブルは後を絶ちません。リフォームの本当の価値は、工事が終わった瞬間に決まるのではなく、十年後、二十年後にその家がどれだけ快適であり続けているかによって決まります。見積りを比較する際は、提示された価格がその品質やサービスを維持するための「正当な価格」であるかを冷静に分析する必要があります。熟練の職人を手配し、高品質な材料を使い、万全の管理体制を敷くためには、それ相応のコストがかかるのは当然の道理です。目先の数万円、数十万円の安さに目を奪われ、将来の数百万円の損失を招かないためには、見積書の数字の背後にある「価値」を想像することが不可欠です。リフォームは消費ではなく、住まいという資産への投資であるという意識を持つことが、賢い施主への第一歩となります。